抜いた歯冷凍保存  「最長40年間移植が可能」
 
  今日は記事の紹介だけに留めておきます
   
  
  広島県の女性A子さん(21)は、歯が生え替わった後も、上顎
  の右奥歯(臼歯(きゅうし))が生えないなど歯並びが悪く、歯列
  を治す矯正治療を受けていた。生えてこない臼歯部分のあごの骨に、
  自分の親知らずを移植することになった。親知らずは、矯正治療の
  一環で8か月前に抜歯し、広島大の「ティースバンク(歯の銀行)」
  に預けていたものだ。数週間後には、移植した歯で硬いものもかめ
  るようになり、歯並びもきれいになった。  
  歯周病や虫歯で歯を失う人は多い。そんな時に備え、矯正治療で抜
  いた親知らずなどの歯を冷凍保存しておくのが、ティースバンク。
  広島大病院矯正歯科教授の丹根一夫さんと講師の河田俊嗣(としつ
  ぐ)さんらが2004年に設立した企業「スリーブラケッツ」が運
  営する、世界初の「歯の銀行」だ。  
  保存するのは、原則として小臼歯と親知らずで、多いのは親知らず。
  上下に4本ある親知らずは、生えるのが20歳前後と遅く、生えた
  時に歯並びが悪くなると、虫歯や歯周病の原因にもなるため、抜歯
  することが多いからだ。
  抜いた歯を、別の歯が抜けた部分に移植する治療は「自家歯牙(し
  が)移植」と言い、既に一部が保険で認められている。ただ、移植
  した歯が生着するために、通常は抜歯後1時間以内に移植を行う。
  歯の根っこの周りにある組織「歯根膜」が乾燥などに弱く、短時間
  で死ぬためだ。
  河田さんは、歯根膜が付着した状態で、長期に歯を凍結保存する方
  法を研究。試行錯誤を重ね、着目したのが、磁場をかけながら冷凍
  する技術だ。食品の鮮度を保つのに使われている方法で、「歯根膜
  の細胞は解凍後、80%以上が生存している」と話す。
  バンクは、この技術を使い、歯根膜付きの歯を広島大病院の冷凍庫
  でマイナス150度で保存する。
  移植手術は、抜けた歯の歯茎に、解凍した歯を植える。ナイロンの
  糸で固定し、3週間ほどは、移植した歯に衝撃が加わらないよう極
  力使わない。歯の根っこ(歯根)とあごの骨の間にあったすき間を
  埋めるよう、あごの骨が伸びる。1年もすると、歯が顎に固定さ
  れ、歯ごたえを感じながらかむことができる。
  
  保存した親知らずは、形を整えて小臼歯や奥歯に代用できる。小臼
  歯も、下の前歯以外の歯に利用できるという。ただし、感染防止の
  ため本人以外には移植できない。
  保存できる歯は1人8本までで、最長40年間、保存できる。バン
  クには、すでに約600人(約1300本)の歯が保存されている。
  糖尿病や肝臓病などの持病があると、骨の形成などの問題から、
移植できない場合もある。
  歯の移植は、過去2年間に約20件行われた。移植後10年たたな
  いと成功とは言えないが、河田さんは「歯が抜けるなど不具合は生
  じていない」と話し、経過は良好という。
  バンクの利用者の7割は女性。
凍結保存の場合は保険がきかず、費用は抜歯、移植、輸送費などを
  含め、1本当たり20万~28万円程度かかる。
   (2006年9月1日  読売新聞)